2023-10-10

1976アパートメント。

これは、むーかしむかしに書いた話。2012年くらいに書いたものだろうか。

建物に空きが出たそうなので、時を経て、再掲させていただきます。

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1976年、北山。

その頃の北山には、オシャレな空気は流れていなかった。
その頃の北山には、地下鉄も走っていなかった。
その頃の北山には、バブルの賑わいもなかった。

そんな頃に建てられた建物。
そんな砂漠のようなまちに咲いた一輪の花。

結構前から目を付けてました。

でもね、これが意外と接点を持てなかったのです。

そうしてこうして、長い月日が流れました。

そんなある日、この建物の前で素敵なカフェを営む、
親しくさせていただいているオーナーさんにふと聞きました。

あの物件のオーナーさんを知りませんか？と。

ご存知でした。灯台下暗しとはこの事かと。

やっぱ、物事って、時に俯瞰で見ないといけない。

今いる自分の環境から来る先入観や基準、モノの見方から解放されないと。

ね。

話を繋いでもらえそうにはなったんだけど、そうは言うものの、一抹の不安もありました。

長年、外観しか見ていなかった建物。
ずっと、外観だけを見て、恋焦がれた建物。

中身がそうでもなかったら、どうしよう？
内装を見て、恋心が冷めてしまったら、どうしよう？

室内を見せてもらう前に、建物のオーナーさんと電話でお話させてもらった時に、
先にあの建物が好きなんですって言っちゃったな。

ずっとテレビで観ていて、長年憧れた女優さんに初めて会う感じ。

幻滅したら、どうしよう？みたいな。

まぁ、実際、会った事ないんだけど。そんな経験ないんだけど。

なんて事を思いながら、現地へ。そして室内へ。

やっぱり時を経て、他の物件と同じように普通になってしまっている部分もありました。

それは、しょうがないよ。

でもね、確実に輝いているところ、ありました。

限られた時間の中、オーナーさんといっぱい話をさせていただきました。

会って、間なしだけど、がんがん伝わります。

だって、こっちには愛があるからね。

やっぱね、オーナーさんは自分の建物が愛されている実感を持ちにくいから、
普通にしなきゃって意識が働くんです。入居者が決まった、決まっていないでしか、判断できないから。

決まらないリスクを恐れて、みんなと同じにしなきゃって方向に動いちゃう。

自信を持って言いました。最高じゃないですか、こういうの求めている人いますよ。
たくさんじゃないけど、確実にいます。って。

世の中、少しでも嫌われないようにって作られた物件が多いから、そういう物件が多数派になっちゃう。
そういう物件が普通になっちゃう。

不動産業界的にも、普通な物件を普通に紹介する事が普通になっちゃってませんか？

今まではそれで良かったかもしれない。

でも、これからの時代、そんなコトないはず。

自分の中では北山から京都駅まで聞こえるくらいの声で叫びたかった。

まず、目の前の人に届いて欲しかった。

自信持ってください。ここにしかない魅力に。

流されちゃいけない。

こんなの探していたよってあなた。

お待たせしました。

きっと、この建物も繋がっていくご縁の先に、
必然的とも言えるあなたとの出会いを胸を焦がして、待っていると思いますよ。

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11年ぶりくらいの再掲で、当時、こんな熱い事を書いていましたが、
実はその間に、この建物の所有者も代わられて、時の流れを痛感しています。

でも、建物は変わらない。まだ、そこにある。

この11年で、当時、この建物の前にあった僕の行きつけだった素敵なカフェもなくなりました。

時の流れは速く、もう僕も四十五なのだけれど、あぁ、僕に何が残せると言うのだろう？

変わっていったものと未だ変わらぬものが、あぁ、良くも悪くもいっぱいあるけれど。

そして、2023年京都の夏も、また終わり、

相変わらず、僕は不動産業に従事し、まわりのやつらと最善を尽くし、

信じる物件をつくったり、紹介したり、寄り添ったりしながら、自分の期待を裏切らないように生きています。

2014年に独立した時に書いた、このウェブサイトのコンセプトページのラストに書いた文章。

世の中の為とか、 社会の為とか、 でっかいコトは 、何一つ 言えないけれど、
僕に何かを期待していただき 、僕の目の前に立っていただく人の期待には、
できる限り、 応えたい。

そういう想いは未だ変わらず、僕は今日も生きています。